恋愛がワンクール(3か月)しか続いたことがない、恋愛コンプレックスの塊だった筆者。26歳のときに出会った男性と1年半の交際を経て結婚しました。結婚・恋愛に悩む方のサプリメントになるコラムをお届けします。
******
9月のとある週末、私たち夫婦が真剣に話しあったテーマは「別居婚」でした。「なんという急展開!」と思われるかもしれませんが、別居婚を視野に入れることは、私たちにとってそう遠い未来の話ではなかったのかも……と今になって思います。
******
8月末、ふたりで沖縄に行きました。そこでとても険悪なムードになり、沈んだ気持ちでほぼ無言のまま、東京へ戻ってきたのです。私は帰りの高速バスや飛行機のなかで、悲しみがこみあげてきて涙を流していたのはヒミツ(読書に熱中していた夫は、まったく気づく様子なしでした!)。
数か月前に「園子さんが喜んでくれそうなホテルをとったからね」と張りきってくれた夫。確かにすばらしいホテルで、サイトを確認したときホテルの部屋に足を踏み入れたときは、うれしくて心から感謝しました。
旅先で流した初めての涙
でも、楽しいはずの旅行が一転。帰り道には重くて暗い気分しかない。どうしてこんなことに。もう時間は巻き戻せない。そんな思いがぐるぐると脳内を巡ると同時に、旅中の出来事が自動再生されていました。涙と鼻水にまみれながら、その映像を他人事のように見ていたのです。
ふたりの考え方や価値観の違いを、夫から指摘された日がありました。どちらかが、あるいはなにかが悪いという話ではなく、単に「差がある」という話。
******
たとえば、夫は現地でのお店選びへのこだわりが非常に強いのに対し私はそこまででもないとか、アクティブに動きまわりたい夫に対し私はホテルでゴロゴロするのが好きなインドア派であるとか、そういったことです。
結果、別行動をとることもありました。私はホテルで本を読んだり、PCで仕事を片づけたり。これが夫には「旅行を楽しんでいないように見えた」らしく、「僕と旅行して楽しい?」とまできかれる始末。
ギスギスした空気が東京でも継続
話題が予想もしない方向へと発展し、「夫婦間で掲げるべきビジョン」の話をされたときは、「うーん、すぐには思い浮かばない。このままずっと思い浮かばなければ、お互い別々の道を歩んだほうが幸せかもね」と私。そう宣言したあと、私たちはもう終わりだな、と思いました。
******
すばらしく上質なホテルに、豪華な食事。外観上は最高な旅だったにも関わらず、結果は……。帰宅後もその余韻を引きずり、これまでとは違うギスギスした空気が漂っていました。休み明けのため、お互いにスケジュールがぎゅうぎゅうに詰まっていることも関係して、顔をあわせる機会が激減し、一緒に暮らしているのに顔も見ない日が続いていたのです。
******
そんななか、先週末のこと。久しぶりにふたりで近所のおいしいちゃんこ鍋の店で食事をして帰宅。やや気詰まりそうに見える夫を前に、できるだけ笑顔で楽しそうにふるまうことを意識したのを覚えています。と、その日の夜中、夫が私の部屋にやってきて言いました。
付き合っていた頃はふたりの時間を大切にしていたのに
「園子さん、前に『夫婦で同じマンションの隣あった部屋に住むのはどう?』って話してたじゃない。あれ、やってみてもいいかもね」
あらあら。この夜、私は一人で暮らすための物件を検索していました。今の私たちは少し距離をおいたほうがいいだろう――そう思って、別居用の物件をせっせと探していると、新しい暮らしがふたりの関係性を進化させる希望の星に思えてきたのです。
******
「僕たちが一番仲が良くて、園子さんも旅行を楽しんでいたのは、まだ付き合っていて別々に暮らしていた頃だと思うんだよね」と夫。当時私たちは電車で20分ほどで行き来できる場所で、それぞれ一人暮らしをしていました。週末になるとどちらかの部屋を行き来し、デートは目的地の最寄駅で待ちあわせ、という、今とはまったく違う暮らしでした。
常に夫のそばにいたわけではなく、会うのは週1回程度ですから、彼のことはもちろん、一緒にいる時間をとても大切にしていたのを思い出しました。ともにすごす時間が限られていたからこそ、それに集中していたのです。
「一緒に楽しむ」努力を放棄していた
旅行も同じです。普段すごす時間が短いぶん、長時間一緒にいる時間が珍しくて新鮮なため、旅行中に彼は外へ、私はホテルで仕事……といった日中の別行動は、緊急時を除きありませんでした。同じものを見て、同じ体験をするのを純粋に楽しんでいた時期。
それが、2年半ほど前から同棲し結婚、という形で共同生活をはじめてから、確かに私の態度は変わりました。お互いの生活時間やスケジュールの違いで、コミュニケーション量が少なくなるときがあるとはいえ、同じ屋根の下に住んでいる間柄のせいか、油断や甘えがありました。
******
旅先でもそれが態度に出ていたのでしょう。「毎日顔をあわせているから、一緒に行動しなくても~」「彼は一人行動も好きな人だから~」「私は今仕事を大量に抱えているし、彼も同業だからわかってくれる~」など。
以前は多少ムリをしてでも旅行を集中的に楽しむため、旅前に終わらせていた仕事を、最近は「現地ですればいいや」と旅先へ持ちこむなど「一緒に楽しむ」という原則を忘れ、完全に自己中心的な考え方をしていたのです。
******
そんなあらゆる油断や甘え、それらに付随する態度や行動が常日頃からにじみ出ていたせいで、私たちは男と女の関係性をも失っていました。ずいぶんと前から。彼はそんなことにも言及しました。
環境を変えれば関係性も変わるのか?
だから、環境を変えてみようと。ただし、彼が住みたいエリアと私のそれとは違うので、同じマンション内に住むのではなく、前のように異なるエリアに住むのはどうか、と提案しました。それぞれが暮らすであろう場所は、週末に行き来するのに無理のない距離です。環境を変えることで、彼のことや彼との時間を昔のように大事にする気持ちが生まれ、向き合い方が変わる可能性があるのでは、と予想しています。
******
もちろん一緒に暮らしていても、相手のことを大事にしたり、家族でありながら男と女であり続けられる人はいるでしょう。でも、私(私たち?)はそれができませんでした。「家族だから……」と言い訳するのは、ありふれているし、子どもっぽい考え方だとは承知の上。
安定していて、かつ恵まれた状況に身をおくと、つい怠け癖が出てゆるんでしまう、どうしようもない人間なのです。少なくとも私はそう。だから、あえて離れてみる――そんな選択肢をとってみようと決めました。
どんな結果になるかは、やってみないとわかりませんが、このまま一緒にいてモヤモヤし続けるよりは、思いきって環境を変えてみたい。それでもうまくいかなければ、もう仕方がないと受け入れるしかない。
******
11~12月以降になるとは思いますが、今後は別居婚という新しい形の結婚生活についてのレポートもしていけたらと思います。