日に日に秋も深まり、この季節ならではの食材が食卓に並ぶようになりました。『実りの秋』とか『食欲の秋』と呼ばれるように、食いしん坊さんには至福の季節の到来です。そんな秋の味覚ですが、ただ何となく食べるよりも、食材の背景にあるストーリーやお酒とのマリアージュなんかを考えながら味わうと、その愉しみは更に広がります。今回は、この時期に登場する人気の旬食材を、ワインや楽しみ方と絡めてご紹介したいと思います。
サンマ
日本人の食卓に昔から馴染みがあるサンマ。漢字では「秋刀魚」と綴る、刀の様に輝く秋に美味しい青魚です。「目黒のさんま祭り」でも知られているように、日本各地でサンマ祭りが開催されるほど愛されている食材ですよね。サンマにはEPAやDHAという酸がたくさんふくまれていて、生活習慣病を予防したり悪玉コレステロールを減らしたりする作用があるとも言われているのも嬉しいポイントです。さて、そんなサンマの最も定番の食べ方と言えば、シンプルな塩焼きでしょうか。大根おろしを添えて、レモンやスダチをさっと搾り、ポン酢やお醤油でいただくのは、サンマの香ばしさやジューシーな脂を最大限に堪能できる究極の手法と言ってもいいかもしれません。さて、そこに寄り添うパートナーとしてオススメしたいのは、「甲州」というブドウ品種を使った日本ワインです。甲州ワインの特徴として、心地よく穏やかな柑橘香があげられますが、スダチやカボスや柚子といった日本ならではの柑橘のニュアンスを多く呈します。なので、スダチを絞ったら美味しくいただける食材にはまさにピッタリ。ほんのりスモーキーな印象もあるので、そこもまた焼けたサンマの香ばしさとキレイに同調するはずです。
栗
炊き込みごはんにクリーム煮、更には甘露煮やモンブランといったスイーツまで、幅広いお料理で使われる秋の味覚のひとつが栗。この食材、実は稲作が始まる前の縄文時代から主食として食されていたほど、古い歴史を持っています。また、保存食である「かち栗」は「勝つ」に通じる縁起の良い食べ物として、かつては戦へ出陣する時に士気を高めるため、また勝利を祝すために使われたと言われています。いまでもお正月はじめ季節行事などには栗を食べて縁起を担ぐという風習は残っていますよね。そして嬉しいことに、栗はとても栄養バランスがよく、デンプンはじめ、タンパク質、ビタミン、ミネラル、食物繊維が豊富に含まれている健康美容食とも言われているのです。そんな栗とワインの関係ですが、栗の渋皮煮を作るときに赤ワインや白ワインをたっぷり使って煮込んでみてください。これがまた奥深い大人の味わいになって、ワインとの相性も抜群になります。特に赤ワインで煮込むと、栗がとてもキレイなワインレッドの色調になるので、見た目にも華やかでオススメ。ぜひお試しあれ。
柿
さて、秋の果物は色々ありますが、その代名詞と言えば……オレンジの鮮やかな色調が美しい「柿」が思い浮かぶのではないでしょうか？味わいはもちろん、あのキレイなオレンジの果肉の中に抗酸化作用のあるベータカロテンがたっぷり含まれているというのも魅力。そしてお酒好きに嬉しいのは、柿が二日酔いの予防にも良いとされていること。柿に含まれる「タンニン」や「カタラーゼ」という酵素が、アルコールの代謝促進やアセトアルデヒドの分解促進に一役買っているのだそうです。さて、柿をワインと一緒に楽しみたい時におススメしたいのが、生ハムにくるっと巻いていただく食べ方。イタリアではプロシュート・エ・メローネ（Prosciutto e melone）といって、生ハムとメロンを一緒に食べることがありますが、それの柿バージョンとでも言いましょうか。生ハムの塩味と柿の甘味のハーモニーは絶妙ですし、そこにロゼシャンパーニュなど合わせてみても非常に良く調和するんです。あと、ワインと相性が良いのは干し柿。ドライフルーツはよくワインと一緒に食されますから、干し柿だって合わないワケはありません。干し柿をチーズと一緒に合わせてもまた絶妙。季節感をたっぷり楽しめるワインのアテとしてチャレンジしてみてくださいね。
いかがでしたか？ ブドウに秋鮭にキノコに……ご紹介したもの以外にも、まだまだ秋の食材は盛りだくさん。定番の味わい方はもちろん、ちょっと楽しいアレンジを加えながら、旬の味覚を存分に楽しんでみてはいかがでしょうか。